PCT NOBO最後の街、マザマに着きました。
今はLions Denというトレイルエンジェルが寄付制で開放しているご自宅にステイしています。
Lions Denではシャワー、洗濯、宿泊(キッチンあり)のハイカーはの提供をドネーションによって運営されているトレイルエンジェルハウスです。
庭には大勢のハイカーがテントを張るスペースや休憩場所があり、これからカナダ国境へと旅立つハイカー、帰ってくるハイカー、SOBOハイカー達が交流する拠点になっています。

こんな素敵な場所がある事が普通の感覚になっていますが、濃いトレイルカルチャーがあるアメリカならではの光景です。
日本にもこんなハイキングカルチャーを作っていきたいと感じます。
さてカナダ国境まで、
いよいよ残り63mile(100km)です。
北カリフォルニアセクションの一部をスキップして来たとはいえ、それでも約4000kmの道のりを自身の足で歩いてここまで来た。
そんな事実はやはり感慨深いものがあります。
毎日歩いていて思う事は
人はハイキングという遊びに、
ここまで没頭出来るのだ。
という驚きです。

毎日十数人ほどのハイカーにすれ違います。
PCTハイカーだけで毎年5000人ほどの人間が世界中から集まり数カ月の間、毎日国境を目指して歩き続けるという遊びをしています。
トレイルでは楽しみもありますが、
正直なところ肉体的、精神的な苦しみや悲しさを感じる事も多々あります。
何日間もお風呂は入れず、洗濯は出来ず、
雨に打たれた日は濡れた体を寝袋で温めてやり過ごします。

トレイルでは限られた食料で過ごすため、
食べたい時に食べたいものは食べられません。
白米や味噌汁、カレー、唐揚げといった日本でありふれたご飯が恋しくもなります。
そんな中でも毎日30〜50kmを歩き続けます。
なんでこんな事をしてるのだっけ?
と思う事も正直なところ度々ありました。
実際にメンタルブレイクといって、
歩き続けるストレスに耐えきれず、
精神が限界を迎える人もいるそうです…。
幸いにも自分は自然の中で過ごす事が性に合っていたのか、"楽しんで歩く"という事を大事にしていた為か、何が功を奏したか分かりませんが、今も歩く事に対してポジティブに向き合えています。
しかし今回のセクションでは、
倒木の多さとトレイルの斜度に苦しめられました。
ほとんどの倒木は自分の膝下くらいの高さなのですが、
稀に自分の背丈ほどの高さに積み上がっているもの、
根こそぎ倒れてトレイルを丸々塞いでいるものがある為、
大きくトレイルを迂回せざるを得ず、
それを繰り返して登って行くつづら折りの道は傾斜も強く、
これが10kmほど続いた時は正直参りました…。
さらに新調した靴が足に合っておらず、
足中が靴擦れで痛むという不運も付き纏い、
トレイルではかなり気が滅入っていた瞬間もあります。
(トレイルタウンのフードと人との交流で気持ちは大体回復します)
そんなトレイルの癒しは稜線に出て広がる景色と湖、
そしてハックルベリーです。

オレゴン、ワシントンには沢山のハックルベリーが、
鈴なりに実を付け茂っています。
手頃な実を見つけたら、
ポイと口へ放り込んで食べます。
味の当たり外れの差が大きいのですが、
当たりの実は甘みも強くジューシーで、
野生味に満ちた力強い味わいが口に広がります。
そんなハックルベリーや高山植物の織りなす、
色鮮やかな自然がワシントンの稜線には広がっています。

所々で葉が赤く色付き始めていて、
山容は色鮮やかな段つき紅葉に染まっており、
秋の訪れを静かに告げていました。
ローカルの人々は後2週間ぐらいすると、
山間部で初雪が降るかもねと言っています。
それを聞くと灼熱の砂漠地帯を歩いていた頃が、
まるで遠い昔の様に感じてしまいます。
さて明日からは、
いよいよカナダ国境に向けて歩き出します。
北端のターミナスが見えた時に一体何を感じるのか。
そこにはどんな光景が広がっているのか。
そんな楽しみを胸に眠りにつきたいと思います。
MJでした。
P.S
今更ながらご報告です。
Saikou!(最高)というトレイルネームをいただいています。
実は中盤のシエラセクションで貰っていたので、約2ヶ月ほどの間、気が向いたら名乗っていました。
名付けの理由は長くなるので、こちらでは割愛しますが、意味は日本語の「最高!」そのままです。
名付け理由が気になる方はお会いした時にでも聞いてください🙆
※ややこしくなるので、引き続きこちらではMJの名を使わせていただきます。



































